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網羅型アレイ

HuPEX®による研究成果が、トップジャーナルの『Nature Communications』誌に掲載されました。

全身性強皮症(Systemic sclerosis:SSc)は、皮膚や内臓が硬くなる線維化を特徴とする自己免疫疾患であり、多様な自己抗体が関与すると考えられています。しかし、リツキシマブ(RTX)によるB細胞除去は臨床的に有益であることが示されているものの、反応の予測バイオマーカーはこれまでに見つかっていませんでした。

本研究では、HuPEX®(Human Proteome Expression resource)と呼ばれる、ヒトのタンパク質を網羅的に発現することができるリソースから約13,000種類以上のヒトタンパク質を合成し、これらのタンパク質を搭載したHuPEX®網羅型タンパク質アレイを使用して、B細胞除去療法を受けた全身性強皮症患者の血清中の自己抗体解析を行いました。この方法により、特定の自己抗体のみを調べる従来の解析とは異なり、患者ごとに異なる自己抗体の全体像を包括的に把握することが可能となりました。

その結果、SSc患者では健常者に比べて総自己抗体レベル(検出された自己抗体レベルの総和)が有意に上昇しており、RTX高反応群では低反応群よりも治療後の減少が大きいことが明らかになりました。さらに解析を進めたところ、免疫系で重要なケモカイン受容体CCR8に対する自己抗体が、治療反応性や病態と関連する可能性が示されました。また、CCR過剰発現細胞および疾患モデルマウスを用いた検討によって、この自己抗体が免疫細胞の働きに影響を与え、線維化の進行に関与する可能性が示唆されました。

本研究成果は、全身性強皮症における自己抗体の新たな役割を示すものであり、将来的な病態理解の深化や、治療効果を予測する指標の開発につながることが期待されます。

詳細は論文をご覧ください。

Autoantibody landscape and functional role of anti-C-C motif chemokine receptor 8 autoantibodies in systemic sclerosis: post-hoc analysis of a B-cell depletion trial

Kazuki M. Matsuda, Yang-Yi Chen, Satoshi Ebata, Kazuhiro Iwadoh, Hirohito Kotani, Ai Kuzumi, Asako Yoshizaki-Ogawa, Cheng-Che E. Lan, Hsin-Su Yu, Hayakazu Sumida & Shinichi Sato

DOI:https://doi.org/10.1038/s41467-025-66974-4

Accepted:20 November 2025

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