SERVICE

HuPEX®網羅型タンパク質アレイ受託解析サービスとは?

弊社のHuPEX®網羅型タンパク質アレイ受託解析サービスは、約1.35万種類のヒトタンパク質に対する抗体の反応性を一度に解析できます。

本サービスで使用しているタンパク質アレイは、弊社の出身母体である国立研究開発法人産業技術総合研究所で開発され、弊社が独占的ライセンスを受けています。

このタンパク質アレイは、産総研時代から多数の共同研究で活用され、ヒト血液中の自己抗体に対する網羅的な解析や人工抗体の反応性の評価、新しいバイオマーカーの探索、抗原同定など、数多くの研究成果を挙げてきました。

プロテオブリッジ株式会社は本技術を更に発展させ、2023年9月より受託解析サービスとして開始し、多数の医療系研究機関様、製薬企業様からご利用いただいています。

多項目の自己抗体を同時に測定

自己抗体が、疾患マーカー・原因となる代表的な病気

HuPEX🄬網羅型タンパク質アレイは非乾燥を保持しており、搭載されている1.35万種類の抗原タンパク質の構造を保持しています。そのためタンパク質アレイ基板上で抗原抗体反応を再現しやすく、自己抗体の同定に秀でています。
自己抗体が関連する代表的な病気として自己免疫疾患があげられます。
自己抗体は様々な疾患のマーカーや疾患発症の原因となることが知られており、疾患と自己抗体の関係に関する研究は世界中で増加傾向にあります。

代表的な病気

自己免疫疾患

自己免疫疾患とは、本来体外から侵入する異物に対して攻撃する免疫が、異常な自己免疫反応により自分自身を異物と判断し、攻撃してしまうことで発症する疾患の総称です。その多くは病態が解明されておらず、国の難病指定を受けている希少疾患です。これらの疾患では、自己抗体の有無が診断基準の項目となっているものが多くあります。

膠原病

自己免疫疾患の一種である「膠原病」とは、多数の病気の総称です 。膠原病の患者さんの体の中には、自分の体を攻撃する細胞(自己反応性リンパ球)や、蛋白質(自己抗体)が存在し、これらが皮膚や筋肉、関節、内臓、血管などに炎症を起こすと考えられています。代表的な膠原病には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、多発性筋炎・皮膚筋炎、全身性強皮症などがあります。

HuPEX®網羅型タンパク質アレイ受託解析サービスの内容について

サービス内容

項目内容
サービス名HuPEX・網羅型タンパク質アレイ受託解析サービス
検査の概要HuPEX”網型タンパク質アレイ受託解析サービスは、ヒトタンパク質に対する、血清・血漿・抗体の網羅的な抗体プロファイリングに特化した受託解析サービスです。
用途バイオマーカー探素、抗原同定、病勢モニタリング、治療前後の比較、医薬品候補抗体の特異性検証など
検出抗原種類数
(遺伝子名ベース)
13,351種類(2023年8月22日現在)
検体種類・検体量血清もしくは血漿いずれも300μL ※モノクローナル抗体については要相談
検体の提出条件採血後、血清分離を行い凍結した検体をご提供ください。
抗体についてはご相談の上決めさせていただきます。
最低オーダー件数2検体
検査方法間接蛍光抗体法
報告形式結果レポート(PDF形式)
各搭載タンパク質に対する定量データ(Excel形式)
※定量データはIndex値でご報告します。
※アレイ間での比較が可能です。
所要日数原則、検体受領から2ヶ月
検査費用別途お見積り
検査依頼方法ホームページ内の検査案内および検査依頼書をご参照ください。
備考成人健常者の自己抗体データ(Index値)を無償でご提供いたします。
本サービスは研究目的でのみ提供されるものです。診断目的には使用できません。

ファイルダウンロード ※一部準備中

結果報告書

HuPEX🄬のオプションサービス

解析のイメージ

※写真はイメージです

・MA plot

MA plot

・Volcano plot

Volcano plot

・相関解析

相関解析

・ヒートマップとクラスタリング

ヒートマップとクラスタリング

※写真はイメージです

下記サービスはエクセルデータでお渡しいたします

解析項目概要価格
MA plot*2群間の自己抗体変化倍率と自己抗体反応の関係をグラフ化し、有意差が認められそうな自己抗体候補の選定を行います。
(1群あたりの検体数は問いません。)
¥20,000-/1パターン***
Volcano plot*2群間の比較解析を実施し、有意差P値と抗体反応の比をグラフ化し、有意差が認められる自己抗体を抽出します。
(1群あたり3検体以上必要になります。)
¥30,000-/ 1パターン***
相関解析2群間にて各自己抗体がどの程度同じ傾向にあるかをグラフ化します。¥10,000-
ヒートマップとクラスタリング自己抗体反応ごとに分類し、自己抗体反応量を色で表現したグラフを作成します。¥30,000-
正常組織における発現解析**任意の自己抗原が発現するヒト正常組織、細胞種の推定を行います。¥20,000-/ 1パターン***
がん細胞における発現解析**任意の自己抗原が発現する培養がん細胞の推定を実施します。¥20,000-/ 1パターン***
細胞内における抗原の発現部位の推測**任意の自己抗原が発現するオルガネラを推測します。¥20,000-/ 1パターン***

MA plotとVolcano plotはどちらか片方の解析になります。前者は有意差検定を行っていないため参考データになります。後者の解析は有意差検定を行います。
** こちらの解析は有意差がある自己抗体(候補)または陽性自己抗体に対し実施可能です。
*** パターンとは、例えばA・B・C群があり A群 対 B群、 A群 対 C群の自己抗体反応の比較を行う場合は2パターン、さらに総当たりであるB群 対 C群を追加する場合は3パターンになります。
弊社が保有している成人健常検体と比較解析を行うことも可能です。

測定原理

血清・血漿をアレイに反応させる

血清・血漿をアレイに反応させる

自己抗体が抗原タンパク質を結合する

自己抗体が抗原タンパク質と結合する

自己抗体が検出される

自己抗体が検出される

HuPEX🄬網羅型タンパク質アレイ受託解析サービスでは、お客様からお預かりした検体(血清、血漿、人工抗体)を、弊社で製造した網羅型タンパク質アレイに添加し、反応させます。測定は間接蛍光抗体法(indirect immunofluorescence;IIF)で行われ、個別の抗体に対する定量化データをお返し致します。

測定手順

  • タンパク質アレイに検体を添加し、アレイ上に搭載された抗原(ヒトタンパク質)と反応させます。
  • 洗浄後、蛍光標識抗体を添加して二次反応を起こします。
  • 得られた【抗原+抗体+蛍光標識抗体 複合体】を、蛍光スキャナで測定します。

オーダー方法について

血液検体(血清あるいは血漿)をご送付いただきますと、検体の調整、「HuPEXⓇ網羅型タンパク質アレイ」を用いたアッセイ、解析および数値化、試験報告書の作成を実施いたします。
梱包例を参考に、検体・検査依頼書・同意書をご用意いただき、弊社の受託検査事業部宛にお送りください。誠に勝手ながら、検体送料はお客様のご負担でお願い致します。

また検体送付に際し、到着予定日をメールにてご連絡いただきますようお願い申し上げます。
(プロテオブリッジ株式会社 受託検査事業部、hupex@proteo-bridge.co.jp

【検体送付先】

〒135-0064 東京都江東区青海2-4-7
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 臨海センター別館5108号
プロテオブリッジ株式会社 受託検査事業部
TEL:03-6457-1661
※平日の水曜、もしくは木曜午前着(到着日の翌日が休日となる場合、別日を選択してください)の指定でご送付下さい。(年末年始を除く)

HuPEX🄬網羅型タンパク質アレイ・カスタム型タンパク質アレイの活用例

利用者の活用実績

事例1

新たなバイオマーカー抗ZSCAN1自己抗体の発見

研究手法

HuPEX®網羅型タンパク質アレイ解析

アレイ解析に使用したサンプルは、ROHHAD症候群の小児患者5名(女性4名、男性1名)の血清を混合したミクスチャー血清。
その結果、33種類のタンパク質が自己抗体の候補抗原としてリストアップされました。

カスタムアレイの作製と自己抗体解析

マーカー候補となる33種類の抗原タンパク質を用いて、カスタム型タンパク質アレイを作製しました。アレイ解析に使用したサンプルは、非がんROHHAD症候群患者5名の血清。患者5名の内4名でZSCAN1タンパク質に反応する自己抗体が検出されました。

患者血清IgGおよび抗ZSCAN1抗体(市販)の組織染色

患者血清IgGおよび抗ZSCAN1抗体(市販)を用いたマウス脳下垂体外器官の組織染色を実施しました。
脳弓下器官内にZSCAN1タンパク質が発現しており、患者血清中の自己抗体が同一部位と反応することを確認しました。
ZSCAN1がROHHAD症候群の自己抗体標的であることが判明しました。

抗ZSCAN1抗体を検出するELISA法の開発

ROHHAD症候群で非がんROHHAD症候群患者14名、正常な被験者15名、および自己免疫疾患を持つ被験者5名を対象に、抗ZSCAN1自己抗体の陽性反応をELISA法を用いて解析しました。
その結果、腫瘍を伴わないROHHAD症候群患者14名のうち12名が、ELISA法により抗ZSCAN1自己抗体陽性であることが確認されました。

成果

◎ 腫瘍の有無にかかわらず、抗ZSCAN1自己抗体がROHHAD症候群の診断マーカーとして有用である可能性が示唆されました。

論文情報
Akari Nakamura-Utsunomiya , et al. Anti-ZSCAN1 Autoantibodies Are a Feasible Diagnostic Marker for ROHHAD Syndrome Not Associated with a Tumor
Int J Mol Sci. 2024 Feb 1;25(3):1794. doi: 10.3390/ijms25031794.

事例1

網羅型タンパク質アレイによって検出される自己抗体の総和は、疾患状態を反映する

研究手法

HuPEX🄬網羅型タンパク質アレイによる自己抗体プロファイリング

遺伝子12,946クローンから合成した抗原タンパク質が搭載されたHuPEX🄬網羅型タンパク質アレイを用いて、全身性強皮症(SSc)患者検体(N=32)、尋常性乾癬(PsO)患者検体(N=8)、皮膚動脈炎(CA)患者検体(N=16)、悪性黒色腫(N=40)、健常者(N=20)のプール血清から自己抗体を測定しました。

自己抗体の絞り込みと相関解析

SSc、Pso、CAにおいてプロテオーム全体にわたる自己抗体プロファイリングを実施した結果、合計565種類の自己抗体を検出しました。診断や疾患活動性マーカーとして報告のある自己抗体と、細胞膜や細胞外に発現するタンパク質に対する自己抗体、合計178種類に絞り込み、臨床所見と詳細な解析を行いました。

各疾患の臨床的特徴と自己抗体レベルの関連

炎症マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)と正の相関を持つ自己抗体の総和(SAL-P-CRP)を求めて、各疾患との臨床的特徴を解析しました。SSc患者において、SAL-P-CRPは、間質性肺疾患(ILD)の指標や皮膚硬化スコア(mRSS)と有意に相関し、ILD予測において既存マーカーよりも優れていることが示されました。Pso患者では、SAL-P-CRPは乾癬性関節炎(PsA)を有する患者で有意に高く、皮膚症状(PASIスコア)とも関連しました。CA患者では、SAL-P-CRPは治療非反応性の患者で有意に高値を示しました。

悪性黒色腫における自己抗体の網羅的な測定の臨床的意義

MM患者血清から488種類の自己抗体を検出しました。転移のある進行型MM患者(StageⅢ, Ⅳ)では、転移のないMM患者(StageⅠ, Ⅱ)よりも自己抗体の産生が顕著であることが判明しました。以上の結果は、MM患者における網羅的な自己抗体同定によって、転移や進行が予測できる可能性を示しています。

成果

◎ 間質性肺疾患を予測する自己抗体としては、抗トポイソメラーゼ I抗体がこれまで最も有用 (70%以上で、間質性肺疾患を予測)でした。
◎ CRPと有意な正の相関を示した自己抗体の力価の総和 (SAL-P-CRP) は、抗トポイソメラーゼ I抗体より有用な強皮症の重症度を反映する新たなバイオマーカーとなる可能性が示されました。
◎ プロテオーム全体にわたる自己抗体の網羅的なスクリーニングにより、疾患特異的な免疫学的特徴を明らかにし、新しい診断ツールの開発への道を開く可能性があります。

論文情報
Kazuki M Matsuda, et al. Autoantibody Landscape Revealed by Wet Protein Array: Sum of Autoantibody Levels Reflects Disease Status
Front Immunol. 2022 May 4:13:893086. doi: 10.3389/fimmu.2022.893086. 

事例1

全身性自己免疫疾患における自己抗体の包括的なプロファイリング

研究手法

タンパク質の合成

全身性自己免疫疾患のなかで全身性強皮症(SSc)および多発性筋炎(PM/DM)に関連する43種類の自己抗体を検出するため、65抗原タンパク質を選出しました。

カスタム型アレイの作製

選出された65種類の抗原タンパク質を搭載した、カスタム型タンパク質アレイを作製。
使用した血清は、日本人の全身性強皮症(SSc)患者357名、多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)患者172名、日本人の健常者93名。

自己抗体検出と解析

SSc患者、PM/DM患者、健康者の血清をカスタム型アレイで解析した結果、SSc患者では抗CENP-B抗体(32.2%)、抗トポイソメラーゼI抗体(26.9%)、抗RNAポリメラーゼIII抗体(11.2%)が上位で検出された。PM/DM患者では抗TIF1-γ抗体(24.4%)、抗TIF1-α抗体(18.0%)、抗PL-7抗体(6.4%)が上位に検出された。また、両疾患に関連する抗SS-A/Ro52抗体はSSc患者の25.2%、PM/DM患者の36.0%で検出されました。一方、健康者ではほとんどの自己抗体が検出されなかった。

補助検証

市販ELISAキットを用いて、抗トポイソメラーゼI抗体、抗CENP-B抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体などの自己抗体レベルを測定。抗AMA M2抗体を市販FEIAキットで測定。免疫沈降法で抗体を検出。間接蛍光抗体法による細胞染色で自己抗体の蛍光パターンを観察。Spearman相関検定を使用した相関解析を実施。

成果

◎ カスタム型アレイでは、一度の検査で43種類の自己抗体を検出可能でした。この研究は、カスタム型アレイの有用性を示すとともに、包括的な自己抗体プロファイリングにより、診断精度の向上、早期診断、個別化治療、予後予測が可能になり、患者に合わせた最適な医療を提供する基盤が構築されました。また、疾患理解の深化と新規治療法開発にも寄与する重要なデータが得られました。

論文情報
Ai Kuzumi, et al. Comprehensive autoantibody profiling in systemic autoimmunity by a highly-sensitive multiplex protein array
Front Immunol. 2023 Aug 28:14:1255540. doi: 10.3389/fimmu.2023.1255540. 

事例1

ウェットなヒト網羅型タンパク質アレイを用いた生殖細胞特異的に結合するTRA98マウスモノクローナル抗体の抗原同定とその特性解析

研究手法

タンパク質アレイの開発

ヒトcDNAを鋳型として合成した19,446個のタンパク質を搭載したウェットな網羅型タンパク質アレイ(CWPA)を開発した。CWPAは世界最大規模のタンパク質搭載数と、作製からアッセイまで一貫して乾燥を防ぐ特徴をもつ。またタンパク質搭載量の高い均一性(最も搭載量が多いタンパク質と少ないタンパク質の差が平均47.3倍以内に収まっている)も実現した。

網羅型タンパク質アレイを使用したmAb TRA98抗原の同定

マウスモノクローナル抗体 TRA98 (mAb TRA98)は生殖細胞核を特異的に認識する特徴をもち、生殖細胞研究で多く用いられてきたがその抗原は20年以上不明であった。今回CWPAを用いmAb TRA98が認識するヒト抗原の同定を行ったところ、mAb TRA98はnuclear factor-κB activating protein (NKAP)タンパク質に特異的な結合を示した。

Nkap遺伝子の機能欠損マウスによる表現型観察

生殖細胞におけるNKAPタンパク質の役割を探るため、精巣のNkap遺伝子をノックアウトしたマウス(Cre/loxP系条件欠損マウス)を作成した。その結果、野生型マウスとは異なり、精巣は未成熟で生殖細胞が欠失しているセルトリ細胞遺残症候群の病態を呈した。

NKAPは精巣でSUMO化される

FLAGタグ融合NKAPを導入したトランスジェニックマウスの精巣では、抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロッティングにより、分子量98 kDaのタンパク質として検出された。FLAGタグ融合NKAPタンパク質の分子量は47 kDaであることから、精巣ではタンパク質が修飾されていることが予想された。 このタンパク質修飾はSUMO化であることが示唆された。

成果

◎タンパク質搭載量の均一性が高いCWPAを用いることで、TRA98がヒトにおいて認識する抗原はNKAPであることが明らかになった。
◎ 精巣のNKAPはSUMO化されており、分子量は98 kDaであった。
◎ NKAPは精巣の成熟のため重要な働きをもつことが明らかになった。

論文情報
Eriko Fukuda, et al. Identification and characterization of the antigen recognized by the germ cell mAb TRA98 using a human comprehensive wet protein array
Genes Cells. 2021 Mar;26(3):180-189. doi: 10.1111/gtc.12832.

事例1

特発性間質性肺炎(IIP) における新規自己抗体マーカー(抗 IFI16 抗体)の発見と多施設コホート研究における臨床的特徴

研究手法

特発性間質性肺炎(IIP)における自己抗体スクリーニング

特発性間質性肺炎と診断された患者295人を対象として、35S-メチオニン標識タンパク質免疫沈降法を使用して自己抗体スクリーニングを行いました。
その結果、IIP患者295人のうち6人の患者血清において、共通の4量体タンパク質を免疫沈降する結果を得ました。
この4量体の中の抗原を同定するためにHuPEX®網羅型タンパク質アレイを用いて解析したところ、インターフェロンガンマ誘導性タンパク質16(IFI16タンパク質)が同定されました。

インターフェロンγ誘導性タンパク質 16 (IFI16)のタンパク質合成と抗原-抗体反応の確認

4量体タンパク質に対する自己抗体がIFI16タンパク質を特異的に認識することを確認するために、IFI16のCDS(coding sequence)を導入したプラスミドを用いたin vitro transcription-translation (IVTT)によりIFI16蛋白を合成し、免疫沈降法を行った結果、4量体タンパク質に反応した6例の患者血清すべてにおいてIFI16の沈降が確認され、IFI16が目的の対応抗原であることが確認されました。

抗IFI16抗体に関連する臨床的特徴

IIP患者の中でこの抗IFI16抗体が検出される患者は免疫抑制療法を受ける機会が少なく、予後が悪い可能性がある。患者の層別化と管理を改善するために、さらなる研究が必要です。

成果

◎IIPにおける新規自己抗体マーカー、抗 IFI16 抗体を発見しました。この自己抗体の抗原同定にはHuPEX®網羅型タンパク質アレイが使用されました。

◎抗IFI16抗体の臨床的意義を明らかにする研究は、治療反応性の予測、個別化治療の可能性、疾患の免疫学的背景の理解を深めることにつながり、より適切な治療法の開発に寄与する可能性があります。

論文情報
Tsuneo Sasai, Ran Nakashima, et al. Anti-interferon gamma-inducible protein 16 antibodies: Identification of anovel autoantigen in idiopathic interstitial pneumonia and its clinicalcharacteristics based on a multicenter cohort study

Clin Immunol. 2024 Nov:268:110372. doi: 10.1016/j.clim.2024.110372.

事例1

抗RNAポリメラーゼIII抗体のエピトープスプレッシング(ES)と全身性強皮症の臨床症状との関連

研究手法

タンパク質発現

全身性強皮症(SSc)の患者血清中の自己抗体解析を目的として、RNAポリメラーゼIII(RNAP III)複合体のサブユニットおよびRNAPIII主要抗原RPC1の部分タンパク質を合成した。17種類のRNAP III複合体サブユニットの全長タンパク質と、5種類のRPC1の部分タンパク質を、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を使用してFLAG-GST融合タンパク質として合成しました。

抗原結合プレートの作製

合成したタンパク質を使用して、弊社独自の技術である抗原結合プレートを作製しました。抗原結合プレート(96ウェルプレート)は、各ウェルがグルタチオン(GSH)でコーティングされており、FLAG-GST融合タンパク質を結合させることができます。

自己抗体の検出・定量

抗RNAポリメラーゼIII抗体(ARA)陽性SSc患者34名を含むSSc患者75名の血清サンプルを用いて、RNAP III複合体のサブユニット17種類と主要抗原RPC1の部分タンパク質5種類に対する自己抗体の測定を行いました。
その結果、ARA陽性のSSc患者において、RNAP III複合体の様々なサブユニットに対する自己抗体が検出され、患者ごとに異なるパターンを示しました。
そこで、RNAP III複合体のサブユニットに対する分子間のエピトープの広がりと、主要エピトープRPC1に対する分子内のエピトープの広がりを定量化し、比較検証を行いました。

統計解析・臨床像との相関

定量化したRNAP III複合体のサブユニットと主要エピトープRPC1に対するエピトープの広がりと臨床所見との関連を解析しまた。興味深いことに、サブユニットへのエピトープの広がりが大きいほど、皮膚硬化(mRSS)とSP-D(間質性肺炎マーカー)に対してSpearmanの相関係数において有意な相関を認めました。
また、主要エピトープRPC1へのエピトープの広がりが大きいほど、腎クリーゼの発症リスクが高いことがわかりました。
同一患者において経時的にエピトープの広がりを評価すると、皮膚硬化の程度と連動していることがわかり、SScにおける疾患活動性のマーカーとして有用であることが示唆されました。

成果

◎RNAP III複合体のサブユニットをターゲットにした抗体がSSc患者における疾患の重症度や臓器障害(皮膚や肺)と相関していることを示し、これらの抗体が早期診断や予後評価のための有力なバイオマーカーとなる可能性を示唆しています。

※エピトープスプレッディング(ES)とは、自己免疫疾患において、最初に特定の抗原に対する自己抗体が形成された後、異なる抗原に対しても自己抗体が次第に形成される現象を指します。

論文情報
Diversity and Epitope Spreading of Anti-RNA Polymerase III Antibodies in Systemic Sclerosis: A Potential Biomarker for Skin and Lung Involvement  Hirohito Kotani et al., Arthritis & Rheumatology, 2024. doi: 10.1002/art.42975

よくある質問・お問い合わせ

お客様からのよくあるご質問をまとめました。もし解決しない場合は、弊社のお問い合わせ・お見積りフォームより、お気軽にお問い合わせください。

HuPEX網羅型タンパク質アレイを活用した論文

論文一覧

A Case of Acquired Idiopathic Generalized Anhidrosis with Anti-mucin 7 Seropositivity

Acta Dermato-Venereologica, 105, adv42883.

Diversity and Epitope Spreading of Anti-RNA Polymerase III Antibodies in Systemic Sclerosis: A Potential Biomarker for Skin and Lung Involvement

Arthritis Rheumatol. 2024 Sep 1. doi: 10.1002/art.42975

Anti-interferon gamma-inducible protein 16 antibodies: Identification of a novel autoantigen in idiopathic interstitial pneumonia and its clinical characteristics based on a multicenter cohort study

Clinical ImmunologyVolume 268, November 2024, 110372 doi: 10.1016/j.clim.2024.110372.

Autoantibodies to nuclear valosin-containing protein-like protein: identification and characterization of systemic sclerosis-related anti-nucleolar antibodies utilizing in vitro human proteome

Rheumatology, Volume 63, Issue 10, October 2024, Pages 2865–2873,

Clinical utility of anti-Ro52 antibody confirmation in anti-MDA5 antibody-positive dermatomyositis: A case report

Modern Rheumatology Case Reports, Volume 8, Issue 2, July 2024, Pages 291–295,doi:10.1093/mrcr/rxae027.

カスタムタンパク質アレイを活用した論文

論文一覧

testComprehensive autoantibody profiling in systemic autoimmunity by a highly-sensitive multiplex protein arraytest

Front Immunol. 2023 Aug 28:14:1255540. doi: 10.3389/fimmu.2023.1255540. eCollection 2023.